しばらくして、一人の人間が部屋の中に入ってきた。

そいつは黒い服を着ていて、大量の返り血を浴びている。

辺りは暗いので顔がわからない。

身長から多分男…だろう。

そのくらいしかわからない。


そいつは、部屋をキョロキョロ見回している。

おそらく、私を探しているのだろう。


奴は、私がさっきまで握っていた紅花を拾い上げ、首を傾げた。


私は、スキを見て奴に気付かれないように神社を飛び出そうとした。

しかし、途中で小石を蹴ってしまったらしく、小石が床に転がる音が神社全体に響き渡った。


クソッ!

クレナイサマを崇める儀式をする神聖な部屋だっていうのなら、少しは掃除くらいしろよ!

と私はどうにもならない文句を心の中で叫びながら、とにかく神社を出た。


神社の外には、見張りの男が大量の血を流して死んでいた。

さっきの音は、こいつの血が噴出した音だったのだ。


「うっ……」


私は吐きそうになる気持ちをこらえた。