次の日、教室の自分の席に座った途端、クラスのみんなが私の席を囲い始めた。


「ねえ、沙苗ちゃんが今年の紅祭りの捧げ者になったって本当に?!」


ある女の子が、私に言った。

「え!?」

な、なんでもうそのことがバレているの!?


電話は昨日来たばかりだ。

お母さんやお兄ちゃんがバラしたのだとしても、噂が流れるスピードがいくらなんでも早すぎる。


「常葉なら、絶対綺麗な捧げ者になるぜ!」

「ちょっと、なに沙苗のこと口説いてんのよ〜」

「捧げ者頑張ってね!」


みんな、完全に私が捧げ者をやるのだと思っている。

私は、捧げ者なんてやりたくないのに。

断りたいのに。


だけど、こんな空気でそんなこと言えない。


「あ、あはは…」

私は、作り笑いをすることしかできなかった。