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始まりは、たった一本の電話だったんだ。

「はい、もしもし…。

えっ、本当に?はい、はい…。


ちょっと沙苗!アンタすごいわよ!」


お母さんが、二階の私の部屋に向かって大声で言う。

音楽を聞きながら勉強していた私は、ペンを机に置き、イヤホンを外した。


「なにがー?」


だるそうに私…常葉沙苗はたずねた。


「アンタ、今年の紅祭りの捧げ者に選ばれたんだよ!」

お母さんはそう答えた。

捧げ者って…うちの村で毎年行われる紅祭りの儀式の!?

なんで私が…。