いつの間にか、私は薮の中を抜けていた。

私は、唯一殺されなかった奇跡の捧げ者として、村中に知れ渡った。


それ以来、紅祭りの捧げ者は毎年私がつとめることになった。


そして、また夏がやってきた。

紅祭りの季節だ。



神社の中で、私は紅花を持ってあの人が来るのを待っていた。


ざわっと大きな風が吹く。


ギッギッギッという音がする。

あの人が、来た。


部屋の扉が開かれる。


「やあ、我が妻。

一年ぶりだな。

久しぶりに会ったはずなのに、お前の姿は、あれから全く変わらぬな」

「あなたの姿も、ずっと同じままだけどね…」


それに、私の姿が変わらないのは彼のせい。

私が、彼の妻になったからだ。




「では始めようか、本当の儀式を」



仮面を外して、彼は言った。


そして、私と彼は重なり合った。



____End