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去年の五月、俺の家の電話が鳴った。


「はい、もしもし…。

えっ、本当に?はい、はい…。


ちょっと沙苗!アンタすごいわよ!」


母さんが、二階の沙苗の部屋に向かって言う。


「なにがー?」


だるそうに沙苗は聞いた。


「アンタ、今年の紅祭りの捧げ者に選ばれたんだよ!」

「えー、めんどい」


階段を降りながら、沙苗は口を尖らせた。


「お兄ちゃんやりなよ。

お兄ちゃんお祭りオタクだし、ぴったりじゃない?」


沙苗が俺に振る。


「そりゃあできるもんならやってみたいけどさ、選ばれたのはお前だろ。

それに、いつも選ばれるのは女だし。

ていうか、なんでお前選ばれたんだよ。

今までの捧げ者は、綺麗な子ばっかりだったのになー」