薮の中を、私は裸足で必死に走った。

足に草や木の枝が刺さり血が流れている。

それでも、私は走った。


「はっ、はっ、はっ…!」


殺せなかった。

殺せなかった。

殺せなかった。


どうして、憎いはずなのに。

なのに、何故私はあの時殺せなかったの!?


みんなの仇なのに!

麗香の、総司の仇なのに!


あれ…でも…。

私は、神社を出たときから何か違和感を覚えた。

しかし、その原因がなんなのかわからない。


とりあえず、今は走らなくては。

走って、奴から逃げなくては。


後ろから私のものとは違う足音と息遣いが聞こえてくる。

奴が、もうすぐそばまで来ている。


もっと速く走らなくては。