「…」

来た、犯人だ…!

麗香を殺したときと同じ格好だから、間違いない。


私が床に捨てた紅花を奴は、部屋の中を動き回っている。

私のことを探しているようだ。


私は、足音を立てぬように奴に近づき、後ろから短刀をやつに目掛けて振り下ろそうとした。


だけど、できなかった。


無理だよ…やっぱり、人殺しなんてできない…!


そのとき、奴が振り向いた。


「!」


気づかれた!


私は、短刀を持ったまま走って逃げ出した。