だけど、麗香か捧げ者に選ばれたと聞いたときよりも、私は随分と落ち着いていた。


「…そっか」


私は、自分で勝手に納得した。


だけど、お父さんもお母さんも納得なんてするはずがなかった。

たった一人の娘が、殺されるかもしれない。

当たり前の反応だ。


「ねえ、三里を逃がしましょう、この村から!

だって、この村おかしいわよ!

捧げ者の子が殺されていく度に祭りをやり直すし、それを誰も止めないのよ!?

狂ってるわ!」


お母さんが提案する。

すると、お父さんが食卓を叩き、お母さんを怒鳴りつけた。


「なんてことを言うんだ!

そうしたら、儀式はどうするんだ!?

それに、クレナイサマがもっとお怒りになるかもしれないだろう!?

あまり信じたくはないが、これはきっと祟りなんだ!そうに違いない!

これ以上クレナイサマを怒らせるのはよくない!」

「何言ってるのよ!

クレナイサマが何よ!

三里の命はどうでもいいっていうの!?

一人娘の命よりも、クレナイサマがそんなに大事なの!?」