「麗香、走って!」


私達は、無我夢中で走った。

奴も追いかけてくる。

速い!

このままでは、追いつかれてしまう!


「麗香、こっち!」


私は、そばに立っていた大きな木の裏に隠れ、麗香を呼び寄せた。


「…」


奴が、キョロキョロ辺りを見渡す。


探している、私達を…!


このまま隠れて、奴が去るのを待つしかない。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


麗香の息が荒い。

何か、様子がおかしい。


「麗香、どうしたの?」


私は、麗香にしか聞こえないような小さな声で話しかけた。


「足が…」


麗香は裸足だったため、薮の中でかなり切り傷を負ってしまったようだ。

麗香の足からダラダラと流れる血を見ただけで、かなり痛そうなのが伝わってくる。