「そういえば…沙苗(サナエ)ちゃんは来ないの?」


私がそう言うと、総司は黙ってしまった。


しまった、この話題は禁句だった…。

沙苗というのは、総司の一個下の妹さんで、去年の捧げ者に選ばれた人。

しかし、何故か去年のお祭りが終わった次の日から学校に来なくなったのだ。

それどころか、外に出ている姿すら見たことがない。


「あいつは、来ない。

見たいテレビがあるんだってさ。

せっかくの祭りなのにな」


総司が笑ってそう言ったが、その笑顔は無理してつくったように思えた。

総司に複雑な思いをさせてしまった。

今度からは、沙苗ちゃんの話題はあげないようにしよう…。


「じゃ、じゃあね。

またお祭りで」

「ああ、またな」


そう言って、私達は別れた。