これは、とある高校に通っていた男子生徒──犬飼 良太郎(イヌカイ リョウタロウ)の、小さな小さな物語。




─3月某日─



『本日は私たち卒業生のために、このような素晴らしい卒業式を挙行していただき、誠にありがとうございます』



卒業生代表の言葉を聞きながら、俺は静かに微笑みを浮かべていた。


ついこの前 入学したと思っていたのに、気づけばもう卒業だ。



一緒に勉強を頑張ってきた仲間たちは、今日が終われば それぞれの道に進んでいく。


大学や専門学校へ行く人、地元企業へ就職する人、県外へ出て頑張る人、本当にバラバラだ。



3年間いつも一緒に過ごしてきた友達とも、今日でお別れ。


毎日毎日話をしてたのに、まだまだ話し足りないって思ってる。


……本当はもっともっと一緒に過ごしたい。


いつもの教室で、いつもと同じように笑って過ごしたい。



そう思っていても、時間は止まることなく進み……卒業式は滞りなく終了の運びとなった。