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 彼は彼女の許へ向かっていた。

 今迄気づかなかった自分の気持ちが見えた時、直ぐにその想いを彼女に伝えたくて、走り出していた。

 塵の様に積漸したその想いは遂に充溢し、自分でも制御できない程、彼の心を支配していた。

 彼は走りながら、どうしてもっと早くこの気持ちに気づけなかったのかと、後悔と焦りの念に襲われる。だが、まだ間に合う。この想いを伝える事によって、二人の新たな関係が築けると信じていた。

 高鳴る鼓動と共に緊張と喜びが増して行く。彼女にどんな言葉で伝えれば良いだろうか。口元に笑みを浮かべ、頭の中でその言葉を探していた。

 彼女の家に着くと、構わず玄関の扉を開けて入って行く。逸る気持ちを抑えながら彼は言った。

「判ったんだ!」

 彼は階段を一気に駆け上り、彼女の部屋のドアを勢い良く開けた。