「しょうがないな…わかったよ。でも私とっても勉強得意なわけじゃないし、力になれるかんかんな─────っ」
────ギュッ
っ?!
突然、松下くんが私を抱きしめた。
心臓がドキドキとうるさくなる。
なんなのよいきなり!
「ちょ、松下くん…!」
「アリが10匹」
「はい?」
「アリが10匹」
いや、別に聞こえなかったわけじゃなくてですね…。
松下くんは、抱きしめたまま強めに私の背中を3回叩くと、私から離れて満足そうな顔をした。
なにその、もう赤点回避できたみたいな顔。
「じゃあ、さっそく今日から、松下くんがバイト帰ってきた後に始めようね」
「おう」
疲れているかもしれないけど、他に時間はないのだから。
やるなら徹底的にやってやる!
私はそう心の中で意気込んでから松下くんより先に空き教室を後にした。



