「松下くん、みっけ」


私がそう言って近づいても、松下くんの体は動かない。


きっと、私が体育館の真ん中で彼の名前を呼んだ時から私がいるのに気付いたから。



「…松下くん?」


「……」


体育座りで膝と腕で顔を完全に隠してる松下くん。


私は彼の隣に並んで座る。


「疲れたでしょ?久しぶりの運動」


「………」


「松下くんが体育受けない理由、あいちゃんから聞いちゃった。ごめんね、勝手に聞いて」


っ?!


私が謝ると、隣の松下くんがやっとチラッとこちらに顔を見せてくれた。



「…俺のこと嫌いになった?」



「え?なにそれ…。なるわけないじゃん」


「…っ、」


「誰にだって苦手なものくらいあるよ」


「……ん」


今日の松下くんは、いつもの倍可愛い。


素直に頷くところとか、小さく丸まってるところとか、ジャージがぶかぶかでやる気がなさそうなのに、前髪をちゃんと結んで邪魔にならないようにしてるところとか。