「あ、松下くんのところにボールくるよ」
「本当だ」
「さーどーでる。学年一の王子様」
「…あ、あいちゃん?」
あいちゃんの顔、今最高に悪い顔だったんだけど。
「いいから、松下くん見ときな?」
「…う、うん」
勢いよく走ってくる男子生徒と転がるボール。
その目の前には松下くん。
松下くん、上手くボールを奪ってゴールされるのを阻止できるか─────
松下くんの姿勢が変わる。
おぉ、これは奪う気満々!!
そして、松下くんの足がボールに触れた
っ?!
え。
え。
え────────!!!!
私と、見ていた女子たちは全員目を疑った。
松下くんが勢いよく蹴ったボールは、松下くんの真上に上がると、一メートルも離れないところで着地してしまったのだ。
そして、松下くんの今の蹴りはなかったみたいに、他の人たちがボールを持って、再びゲームがスムーズに流れ出す。
…今のって。
たまたま…だよね?
だって…。
「あははははははっ」
「あ、あいちゃん?」
隣のあいちゃんは松下くんをみてゲラゲラ笑っているし。



