「…祐実、気分悪いの?」



帰りの電車の中、松下くんが私の顔を覗き込みながらそう聞いてきた。



「…んー…なんか食べすぎかな…ちょっと寝るね」



お腹が痛いわけでも気分が悪いわけでも眠たいわけでもない。



ただ。



今はいつものテンションで松下くんと接することができない。


なんでだろう。



あの人…綺麗な人だったな…。



松下くん、きっと今も彼女のことが好きなんだろうな。


希和さんの背中を見つめる松下くんの横顔は、すごく嬉しそうな笑顔だった。



松下くんにとって、女子とのスキンシップはさほど重要じゃないんだ。


キスも間接キスも。



あーあ。


なんだろうこの気持ち。



これじゃまるで私、



松下くんのこと─────。



「好きっ!」


っ?!


「俺そのアイドルめっちゃ好き!」


前に座る中学生男子が騒いでいる。



あぁ────。




そう、なのかな─────?