「ねぇ、祐実」


そんな優しく呼ばないで。


きっと、今の私は、大貴が望む答えを言えないから。



「…何?」



なんだか泣きそうになって、私は制服のスカートをギュッと握る。



「こっちみてよ」



大貴、こんな優しい声出るんだな…なんて冷静に感じて。


私はゆっくりと顔を上げた。



「なんで泣きそうなの」


「うっ、だって……」


私はまた俯いた。


ダメだ。
やっぱり大貴を見れない。

今まで自分がやって来た行動が、大貴を傷つけてたかもしれない。


『鈍感』


みんなに呆れてそう言われてたのに。


こうなってやっと気づくなんて。



「ブレスレット、してないね」


「…っ」


私はブレスレットをしてた手首を隠すようにもう1つの手で握る。



「…なぁ、祐実」


もう、彼に名前を呼ばれるのは何回目だろう。



「…ん?」


泣くのを我慢した顔で再度、顔を上げる。