「あ、多分そろそろ帰ってくるはず……。」
「分かった。」
外に荷物を持って出ようとすると、
「私も行くよ! 荷物、1人だと大変そうだから………。」
「え、別に平気だけど。」
「あと、水谷さんを見たことないでしょ? だから見つけたら教えてあげる。」
「あ、そう」
だけど、僕より40cm近く小さい哀川さんに荷物を持たせるわけには行かないから、案内だけしてもらうことになった。



「あ! あの人が水谷さん。」
「あの人が………?」
予想していた大家さんと全然違った。
20代後半くらいのチャラそうな大人だった。
「あの! 水谷さん!」
「あっれぇ? どうしたんだい、こんな所で。」
「えっと、昨日から住む予定だった緋山螢君の事なんですけど……。」
「あ、どうも。」
「緋山、緋山………………緋山!」
僕の苗字をブツブツ呟いたかと思ったら急に音量をあげた。
「緋山君ね! ようこそ! 」

あ、はい。
そんなことはどうでもいいんで。

「緋山君、ごめんねぇ。 部屋なかったでしょ。」
「はい。」
「元々住むはずだった部屋の隣を教えちゃって、訂正するのが面倒だったから、ここにきてからでいいやって思ったんだけど、」
少し間が開く。
沈黙がひろがる。


「隣の部屋、もう人が住んじゃった☆」

ごめんねっ、と謝る姿は全然反省していない。
「え、じゃあ、緋山君はどこに住むんですか?」
「え、昨日はどうしたんだい?」
「哀川さんの家に泊めてもらいました。」
「だったらこれからもそこでいいじゃないか!」


は、何言ってんの?この人。