そうだ…。


あの頃のこうちゃんは、もっと大人しくて本が大好きな人だった。


その頃に比べたら随分喋るようになったし、明るくなったのかも。


「私も、楽しかったよっ!」


「っっ……」


ん?


「こうちゃん?」


こうちゃんが突然、バッと不自然に目をそらすので顔を伺おうとする。



「そういう無自覚なところ、昔から変わらないんだね、沙良」


「えっ…?」


「ううん。なんでもない。ただいま沙良」


っ?!


こうちゃんは私の耳元で優しく囁くと、ギュッと私を抱きしめた。


「うわっ」



「それで沙良…彼とはどこまでいったの?」



っ?!



「ど、どこまでって…」


体を離して聞いてきたこうちゃんに、私は顔を真っ赤にしたまま目をそらす。


なんでそんなこと…聞くの…。


恥ずかしくて全然顔の熱が冷めない。



「フフッ、冗談だよ。からかっただけ」


「へ…」



こうちゃんは私の頭に手をポンと乗せると、爽やかな笑顔を向けて、案内した部屋に入っていった。