そう言って健太は笑った…。


“バチ…ン”

私は健太の左頬を力いっぱい叩いた!

「イッテ…!こんの…!梓、てめぇ…」

健太が左手で私の胸ぐらを掴み、殴ろうと右腕を上げた…その時!

“ポタッ…ポタポタッ…”

健太の左手に“涙”が落ちた…!


健太と付き合って3年…

今まで一度も見せたことのない涙…!


私が健太の前で流す最初で最後の涙…


まさか、こんなに早く流すなんて…思ってなかった!

そして、私の涙に戸惑う健太!

「おい…何泣いてんだよ!」

健太が訪ねる。

それは…付き合い出した頃の健太のように、優しい口調だった!

どうして…?

どうして、別れる前になって…昔の健太の口調で話すの!

何で叩かないのよ!

あの勢いのまま、叩いてくれたら良かったのに…。

そうすれば…

そうすれば…健太のこと“最低な男”のまま“忘れられた”のに…

“好き”を“嫌い”に換えることが、どんなに辛くて苦しいか…健太にはわからないでしょ…

だから、これ以上私を苦しめないで…

これ以上…健太を好きにさせないで…!

私にとって今の健太の、ちょっとした優しさは…とても残酷なんだよ…