「次に、優秀賞の発表をいたします」

大会議室の中がしーんと静まり返った。
手の中に汗が滲む。

「優秀賞は商品企画部の森下優希くんの作品で、剥離紙のないラベルライターです」

森下さんが照れ臭そうに笑いながらおじいさんの隣に立った。

「この商品はこれまでのラベルライターとは大きく違い、シールがセロハンテープのように出るようになっております。これによってシールの剥離紙の部分が不要になり、利用者の利便性と作業スピードが著しければ向上するものと思われます。また若い女性をターゲットに絞り、デザイン、大きさ、価格なども見直しております。大変素晴らしい。おめでとう」

「……え?」

凪くんの声が周りの大きな拍手でかきけされる。

「課長! これって俺らの!!」

私は社長の隣で拍手のシャワーをあびる森下さんを黙って見つめていた。

「許さない……」

亜樹ちゃんがこぶしを握る。そのこぶしは細かく震えていた。

「課長、言ってやりましょうよ! あの人、私たちの企画、パクったんですよ!」

怒りに震える亜樹ちゃんを私は静かに手で押さえた。

「どうしてですか!!」

「ちょっと待って……」

「くそっ」

悔しそうに凪くんがつぶやく。

「俺らの企画だったのに!」

ほっちゃんは静かに前を見ていた。
スクリーンには森下さんの企画書が大きくうつしだされている。
やがて、何かに気がついたようにほっちゃんは「……でも、これ」とつぶやいた。