「そういえば、ラベルライターでシール出す時、いらいらしませんでしたか? 俺だけかなぁ」

凪くんが立ち上がり、折り鶴を拾うとゴミ箱に入れてくれる。
ついでに床に置いてあったラベルライターを回収してデスクの真ん中に並べた。

「あ、それわかる」

亜樹ちゃんが珍しく凪くんに同意する。

「めくりにくいんだよね。シールが」

亜樹ちゃんの言葉にほかの三人が一斉にうなづいた。

「それこそ、このチョコレートの包装紙じゃないけど、はがすところがしにくいんだよね。一枚、二枚ならいいんだけど、あれだけ大量のシールを出さないといけないときは、ほんとイライラしちゃう。あのめくる作業で私はだいぶ時間を無駄にしたわ。あれがなかったら、大原と同じスピードで仕事が進んだはずなのよ」

亜樹ちゃんったら負けず嫌いなんだから、と私はこっそり笑う。
作業スピードで凪くんに負けたと思っているのだ。
亜樹ちゃんには『正確さ』というとてもいい部分があるのに。

なにか言い返すかなと思って凪くんを見ると、凪くんはデスクに並んだラベルライターを手に持って、裏返したり、横から見たりしていた。

「……それだよ」

「……それですよ」

凪くんとほっちゃんの言葉がはもった。

「ん?」

「それだよ! 江原さん!」

凪くんが立ち上がる。

「……あ!」

亜樹ちゃんの顔がぱあっと明るくなった。

「な、何? どしたの?」

目を合わせて何度もうなづきあっていた三人は、「セロハンテープ!」と叫んだ。

「セロハンテープ……?」

三人の言葉を理解した瞬間、私は叫びだしそうになる口を思わず押えていた。

「シールをめくらなくてもそのまま貼れるようにするのね?」

そうです、そうです、と三人が口々に答える。

「ラベルライターはここからテープが出てくる仕組みになってます。それをこの部分で印字して、セロハンテープみたいに引っ張ればそのまま貼れるんじゃないでしょうか!」

凪くんの説明する声を聞きながら、私は胸がどきどきするのを感じた。

いけるかもしれない。
このチームでなら。