桜ヶ丘物語

って、いやいやいやいや、ちょっと待て?!

双眸(ソウボウ)に涙を浮かべて、「迎えに来てくれたのね!鈴音嬉しい!!」とかなんとか感動されるならまだしも、なんで眉間に皺を寄せた斉藤鈴音に睨まれて、こんなにも邪険に扱われてんの、俺?!


このクソ暑い中、10分以上待っていたのに、労い(ネギライ)の言葉一つねぇのかよ!

なんなんだ、このふてぶてしい女は!!


ここは(仮)彼氏としてガツンと一言言わねぇと…!


と、俺は息を肺一杯に吸い込んだのに、


「か、格好いい…」

「…へ?」

「ちょっと鈴音!この人超格好いいんだけど!アンタの彼氏がこんなにイケメンだなんて聞いてないんだけど?!ルーシァに似た人は断ったって、アンタ言ったわよね?!なのになんでここにいるのよ!嘘ね?アンタこの私に嘘をついたのね?断ったなんて言っときながら、本当はこのイケメンを独り占めするつもりだったんでしょう?許せないわ…。今日という今日は覚悟なさい!!!!!」



突如出現したくるくる髪の女によって、用意した文句は酸素と一緒に飲み込まれてしまった。



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