「お兄ちゃんもきっとなにかの本を読んでいるにちがいない」
そう思うことが精神の均衡を保つための、わたしに出来うる数少ない、
いやたったひとつのことだったのだろう。

そんな日々を送っているうちに外はいつのまにか
桜が咲く四月になっていた。

中学生としての最終学年に進級するとクラス替えがあったのだけれど、
わたしはまた玲奈と幸と同じクラスになった。

沙織と結衣とは一緒にはなれなかったのだけれど。

そして部活も最終学年ともなると残すところ数か月しかなくなり、
自然と力も入る。

わたしは最後の大会に向けてほとんど毎日、練習に明け暮れた。

ゴールデンウィークも終わりいよいよ暑くなってきた五月の終わり、
晩御飯を食べてるときにオニイチャンが話しかけてきた。