(やはり、お父様に相談してみよう)


 帰り支度をしながら、ケイトリンは、ロッソに自分の疑問をぶつけることを決心した。貧富の問題はもちろん、できれば結婚についても話をしてみたかった。自分の結婚相手は父親が決めるものだと思っていたから、相手がだれであれ疑問を持つことはなかった。父親を困らせたいわけではない。しかし、好きという感情を知ってしまった今、それを無視して嫁ぐこともまた、父を裏切っているような気がしてならなかった。


 その時、一人の少年がもじもじしながらケイトリンに近寄ってきた。


「あのさ、これ」


 そう言いながら少年が差し出したのは、折りたたまれた一枚の紙切れだった。


 ケイトリンは、意味がわからず顔を傾げる。少年は、ケイトリンの手にその紙を握らせた。


「これ、あんたのペンダントの中に入ってたんだ」


 少年は、ケイトリンと同じくらいの身長だったが、その顔立ちは幼く、まだ12、3歳といったところだ。


 ケイトリンは、少年の顔に見覚えはなかったが、すぐにペンダントを盗った少年だと理解した。


「ペンダントに入っていたってどういうこと?」


 ずっと身に着けていたが、そんな紙切れを見たことなどない。