(そういえば、あの方、どうして私がファビアン様と結婚することをご存じだったのかしら)


 ”未来の王妃”


 レイフは確かにケイトリンをそう呼んだ。自分が王太子妃になることは、まだ公にされていないことだ。


 ファビアンが狩りの途中に偶然この屋敷を訪れた際、彼女に一目ぼれしてとんとん拍子に話がすすんだため、結婚の話を知る者は王族を含めごく一部だった。


 もっとも、ケイトリンの父であるロッソは、昔から彼女をファビアンのもとへ嫁がせるつもりだったため、偶然の出会いを演出したのだということは、見るものが見れば明らかであった。


 ファビアンとケイトリンはいとこ同士で幼馴染でもあったため、はたから見れば二人の結婚はごく自然なことではあった。