「兄弟喧嘩が丸く収まったようでなによりです」
 

 フェルナンドは一部の隙なく微笑んで見せた。ギースは虚をつかれたように顔を歪め、ケイトリンは華奢な体をさらに丸めて小さくなった。


 兄弟それぞれの反応に、フェルナンドは口の端でくすりと笑う。


「ご心配はいりませんよ。また新しい計画を考えますから。まぁ、最初の計画よりも犠牲者の数が増えるかもしれませんが」


 フェルナンドの声は凪を連想させる穏やかなものだったが、その内容は真冬の北風のように冷たく、無情なものだった。


「犠牲者が増えるって、どういうことですか?」


 フェルナンドの説明は、彼が最初に言った通り長い昔語りから始まった。


 ランベール王の死が毒殺であること。それが、アルフォンス王の命令によるもので、それに関わっているのが、ロッソとジゼル王妃であるということ。レイフはフェルナンドから、次の王に指名されていたが、アルフォンス王が指名を受けていたとして王に収まったこと。


「毒殺であったのは間違いありませんが、証拠はありません。しかし、レイフ様を信じるなら次の王に指名されたのはレイフ様でした。それにジゼル王妃は、ランベール王の召使いから始まり、侍女、側室へとなった女です。それが、ランベール王の死後アルフォンス王の正妃となっているのです。シャンタル王女を妻としていたロッソは、それなりの地位は与えられていましたが、いわば名誉職で、政に大きな影響力はありませんでした。それがアルフォンス王が即位した途端、執政官長に任命され、今では、他の追随を許さぬほどの大貴族となりました。ロッソとアルフォンス王が蜜月の関係であることは明白ですし、ジゼル王妃なら、ランベール王に毒を飲ませることも可能でした」