...意を決して、その男性の横を通り過ぎ、
ちらっと確認すると、
「...え!?」
そこに立っていたのは
ーーあの真のイケメンだった。
私が声を上げたことにより、向こうも私のことに気づいた。
「あ...エスカレーターとお昼の...」
と、思い出したように言った。
「.........こんばんは。」
と、お昼の見られたこともあり、すこしぎこちなく会釈(えしゃく)する。
(見られたっていっても...別に、やましいことなんかじゃないのに。)
と、心の中では反抗するが、私の中には少し後ろめたさのような物があるのを感じていた。
もんもんと考えている中、相手はなんにも気にしていないのか、
「こんばんは、あの、ここに住んでいるんですか?」
と何かを心配するような顔でそう尋ねた。
そんな彼の顔をみて、
「はい、あの、どうしたんですか?」
心配せざるおえなくなる。
「実は今日ここのマンションに引っ越したばかりで、ついうっかりカードキーをもって部屋を出るのを忘れて...」
「はは、お恥ずかしいです。」という声と共にそう彼はそう言った。
(なんだ...そういうことだったのか。)
なぜ彼がエントランスでじっと立っていたのかが分かり不安がしゅわ〜っと消えると、
「あ、じゃあ私と一緒に入りましょうか。」
と提案した。
「あ、ありがとうございます。」
営業スマイルのように笑って彼は私にそうお礼を告げた。


