テイラーは有名なシンガーソングライター。日本でも人気があって、ブロンドの髪が綺麗で、赤が似合う、世界中の女の子の憧れの的だ。



だから、彼がテイラーのことを好きでも何もおかしいことなんてない。高校生の男子がテイラーを好きになるのは、むしろよくわかんないアイドルを好きになるよりもずっと好感が持てる。



周りもきっとそうなんだと思う。しっとりとしたバラードに、聴き馴染みのある曲、そして彼の美声。この三種の神器が女の子の胸をとくんっと打って、恋をさせる。



なんて素敵で、なんて罪な行為なんだろう。



私ももちろんその一人。でも、言わせてもらうなら、私は彼がテイラーを好きだってことを知る前から、彼がテイラーを好きになるよりも前から、彼のことが大好きだった自信がある。



自信があるだけ。確証はない。仮に彼がテイラーのことを好きになる前に、私が彼のことを好きだったとしてもなんだ?



椅子を作っている人が椅子を作った人に文句を言うようなものだ。



私の恋は叶わない。叶うわけがない。



だって、彼はテイラーが好きなのだから。