隣人が世話焼きな件について



キッチンの入口で壁にもたれかかり固まっている私にこうちゃんが水の入ったグラスを差し出す


「飲んでシャワーしておいで」


うん、怒ってらっしゃる


いつもの微笑みでいつもより少し低いトーンで放たれた言葉に震える手でグラスを受取り一気に飲み干す



グラスを流し台の中に入れ、逃げるように…と言っても二日酔いの頭痛が酷く壁伝いにのそのそと風呂場に入る




壁にもたれながらいつもより少し熱めのお湯を頭からかぶる





シャワーをしても頭痛も吐気も治まることはなく部屋着に濡れた頭からタオルを被った状態でまた壁伝いにのそのそとダイニングに行くとテーブルには朝食が用意されていて、こうちゃんが座って待っていた



こうちゃんの前には白米とお味噌、卵焼きと焼き鮭と漬物


私の座る位置にはお味噌汁だけ…



ヨタヨタと椅子に座り目の前に置かれたお味噌汁を凝視しているとこうちゃんが口を開く


「二日酔いでそんなに食べられないでしょう?おにぎり作っといたから落ち着いたら食べなよ」


いただきますと食べ始めるこうちゃん


こうちゃんの優しさがじんわりと胸を温かくする


「あの…昨日はごめんなさい」


「自分で歩けない程にお酒飲み過ぎたこと?スーツにスリスリして化粧を付けたこと?帰りの車で爆睡して部屋まで運ばせたこと?ネクタイを引っ張って窒息させようとしたこと?着替えさせようとした俺に蹴りを入れたこと?」



明かされる失態に血の気が引いていく