「飲ませすぎてすいません。俺らタクシーで送ろうとしてただけなんで、あとお願いします」
そう言って専務は小木曽くんからカバンを2つ受取り、私のをこうちゃんに渡す
「ええ、存じ上げております。専務の新井様、いつも佳香がお世話になっております」
こうちゃんがいつもの微笑みで答える
役職と名前を知られていることに驚きの表情の専務とただ2人のやり取りをポカンと見ている小木曽くん
「あぁ、すいません。職業柄、身内の関わる人物のことは調べないと気が済まないんです。AZフォトスタジオさんにはうちの社長もお世話になってますしね」
「それでは失礼致します」と呆気にとられている専務と小木曽くんを置いて私を車の助手席に押し込み黒塗りの高級車を発車させる
こうちゃんの運転はいつだって丁寧で優しい
そしてこの高級車の良すぎる乗り心地にウトウトし、そして眠りが深くなっていった
窓から差し込む光に目を覚ますと猛烈な頭痛と吐気に襲われる
水を飲もうとなんとか壁伝いにキッチンへ下りると既に朝食を作り始めていたこうちゃんが「おはよう」といつもの微笑みをくれる
…いや、微笑んでるけど目の奥が怒ってる
ヤバい…そりゃ怒るよね…
1人で歩けない程に飲んで、帰りの車に乗ってからの記憶がないのに起きたらベッドでパジャマだったということは、こうちゃんが車から運んで着替えさせてくれたってことだよね
背中を一筋の汗が伝う

