「えっ?」
「俺と有村先輩が付きあったら、武山先輩フリーになるよ? 美優さんにもチャンスがくるじゃん」
「無理だよ。だって、タケちゃんは有村先輩が好きだから、わたしなんか……」
「なんで告白しないの?」
「告白って……だって、何回好きと伝えたって、タケちゃんは何も言ってくれない。言ったってどうしようもない。タケちゃんはわたしを好きになってくれないもん」
「あのさ、武山先輩が有村先輩のことを本当に好きだと思ってる?」
「思うよ。じゃなきゃ付き合わないでしょ」

彼は見据えながら、
「あのさ、この前保健室でさ有村先輩、武山先輩とのこと話してたよね。美優さんも聞こえてたでしょ?俺、どう考えても……」

「違う!
だってわたしはタケちゃんに好きって言ってるのに、なにも言ってもらえない。
有村先輩に手を出さないのは、大切だからだよ。
だから簡単にそういうことしてないんだよ!」
「あの人って、美優さん殴るんでしょ?どういうときにするの?」
「タケちゃんはそんなことしない。いつも優しく……」

柊碧人は、わたしの言葉を遮って「本当は?」と諭すように訊く。柊碧人らしくなくて、わたしは、肩の力が抜けた。本当は分かってた。タケちゃんが感情を押さえられなくなる時は、決まってわたしが何かを隠したり、タケちゃんを不安にさせるときだって。

「……わたしが、嘘を吐いたとき」
「不安で仕方ないんだろうね。武山先輩が好きなのは美優さんだから」
「……違うよ。有村先輩だよ」
「武山先輩を好きな振りしているのは美優さんなんじゃないの?」

波にのまれたような不安が一気に押し寄せた。