「十一月っていったら学祭だけど、今年の俺にとってはフルマラソンなんだよねぇ」




学祭で賑やかなキャンパスで、あたしは蒼とベンチに座って話をしていた。

蒼は知り合いの店でビールとから揚げを買って、昼間からおじさんみたいに飲んでいる。

ほんのり紅潮したその顔はやっぱり綺麗で、きゅんと胸が鳴る。




「フルマラソンのためにランニングしてきたからさぁ!

なんとしても完走しないと」




意気込む蒼。

Fは活動していないが、私生活が楽しそうな蒼を見ていると、あたしも嬉しくなるのだった。

そんなあたしたちの前を、たくさんの学生や外部の人が通り過ぎる。

もはや蒼を碧だと気付く人もいなくて。

蒼もどんどん一般人になっている。