EGOIST

フィランダーはエレンの胸ぐらをつかみ、頬を殴る。
二発、三発と繰り返し殴る。
殴りながら「お前が悪い、お前がすべて悪い」と繰り返す。

そうしてもう一発殴ろうと拳が跳んでくる。
だが、その拳は頬には当たらなかった。
エレンの手に阻まれ、パシンと乾いた音を立てただけだった。

「な、」

フィランダーは驚愕する。
エレンの両手は背後で拘束していたはずだ。

「手錠外しは必須科目でして。こう見えて得意なんですよ」

そう言い、開いている方の手を上げた。
その腕にはぶらりと手錠がぶら下がっている。

フィランダーは自分の腕を掴む手を振り払おうとする。
エレンはあっさりと手を放した。

フィランダーはよたよたと後ろに下がる。
下がりながらエレンを睨みつけた。

「ふん、手錠が外せた程度で逃げられると思うな」

背後で、それまで大人しくしていた獣がのそりと立ち上がった。
そしてほぼ同時にエレンに向かってとびかかってきた。

エレンはそれを転がるようにして避けた。
獣は止まることが出来ずに互いの頭をぶつける。
そのせいで踏ん張りがきかなかったのかそのまま滑って機械に激突した。