現実に戻ると、幸人が心配そうに私を見ていた。 「ゴメン。ボーッとしてた…。」 笑顔を幸人に向けたと、同時に私の頬に幸人の手が伸びてきた。 「紗姫…。泣くな。」 「えっ………。」 自分で気付かない内に、私は涙を流していたようだ…。 涙に気付いたら、今以上に溢れてきた。 忘れることの出来ない幸せな時間。 海斗さんの声。温もり。大きな手。低くて、優しい声。 目をつぶればどれも直ぐに思い出す。 忘れないられない想い。