風の吹き抜ける屋上。
 私は手のひらをぎゅっと握りしめて、目の前に立つ先輩に向かって想いを打ち明けた。

 「好き、です……」

 人生で初めての告白。
 初めて恋をした人に告白する。
 それは、とても勇気がいることだった。
 ここまで来るのに、何か月も悩んだ。
 ……そうしてやっと、伝えられたと思ったのに。

 「……ごめんなさい」

 それは、とても簡単に、呆気なく終わりを告げた。
 思いを告げるのにかかった時間とは比べ物にならないくらいに。

 「そうですか……」

 「ごめんね」

 俯いた私にもう一度謝ったその人は、申し訳なさそうに笑って、屋上の扉を開けて出ていく。
 一人取り残された私は、その場へ座り込んだ。
 わかっていた。この恋が叶わないことくらい。
 初めてした失恋。
 それは思っていたよりも辛くて。
 鼻がツーンとして、今にも溢れだしそうな涙をのみ込んだ。