暮らしている街から新幹線で北上をした私たち。


終点の駅に降り立つと、この街はもう冬支度を始めていた。

厚手のコートやダウンジャケットなど
すっかり冬物に身を包んだ人たちが慌ただしく往来している。

私と真白も慌てて手に持っていたコートをそれぞれ羽織った。


夕方というにふさわしい時間だけれど、
曇っているせいか、薄暗くくすんで見える。

天気予報でこのあたりに昨夜雪が降ったときいていたけれど、
街中はもう雪が残っていなかった。


「真雪、今から素敵な景色を見に行くよ。
 現地に着くまでこれをつけておいて。君に驚いてほしいんだ」

駅前でレンタカーを借りて助手席に乗り込むと、真白が私にアイマスクを渡してきた。

「フフフ、楽しそうだね。真白らしいな」

真白に言われたようにアイマスクをつける。

カーステレオのラジオをつけたようでそれは大音量で流れてくる。
車外の音を遮断するのが目的だったのかもしれない。


車の揺れとラジオの音ぐらいしか私は感知することができず、
しばらくすると、隣で運転をしてる真白がいないんじゃないか、
もしかすると違う人にすげ替えてしまったのではないだろうかと急激に不安が襲う。


「ねぇ真白」

「ん?ここにいるよ」

真白は私の手をそっと握ってくれた。

あぁ、真白だ。
まぎれもなく、真白の手。

私はそれを握る。

目が見えないだけで人間はこんなにもぎこちのない動きになるのかと初めて知った。