『今週のCD売り上げ、ダウンロードともにGrandeuがダントツの1位です。このMVに出ているAYANOちゃんも大人気ですよね。謎の美少女』

『年齢も素性もまったく明かされてないですよね。抜群のルックスと、プロも認めるピアノの腕前。CMの動画の再生回数もすごいことになってるみたいですね』

ふわりと回された腕に、綾乃はゆっくりと顔を上げてカズを見上げた。

「すごいじゃん。俺らのことより綾乃のことばっかり」
優しい微笑みを浮かべながら画面を見つめるカズが嬉しくて、綾乃も回されたカズの腕をギュッと握りしめた。

「私でも何かがやれるってわかって嬉しかった」
フフッと笑った綾乃に、

「でも、本当の綾乃を見るのは俺だけだからな」
「え?」

「本当は、昔みたいに地味な格好をしてくれてもいいんだけど……。綾乃の魅力を他の男に見せることは……」

ブツブツというカズは可愛くて、綾乃は笑い声を漏らした。

「見せてないよ。こんな化粧できないし、少し昔よりはマシな服装にしたけど、AYANOってきづかれないよ」
安心させるように言った綾乃に、カズは少しムッとしながら、綾乃の瞳を覗き込んだ。

「見せなくていい。こんなかわいくて、色気のある女は俺の腕の中だけにして」
チュッと音を立ててキスをしたカズの顔が赤くなっていることに、気づき綾乃はくるりと向きをかえると、カズの首に腕を回しそっと唇を寄せた。

「これからもずっと抱きしめてね。私だけを」
ジッとカズを見つめると綾乃はフワリと微笑んだ。

「本当にお前って……。ギャップありすぎ。俺の方が完全にお前にはまってるよ……」
ため息交じりに言ったかずに、

「私をみつけてくれてありがとう」

そう言うと二人は笑みを交わした。