そう言うと、テンちゃんは困ったように眉を寄せ、あたしの頬から指が離れた。


その指先に名残惜しさを感じながらも、あたしはテンちゃんを見た。


「だって、これは蘭ちゃんが決めたことだからね」


「そうだけど……。でも、イジメを助けるってことは、イジメられる側になるかもしれないってことじゃん」


自慢じゃないけれど、あたしは今までイジメらしいイジメを受けたことがない。


陰口くらいはあっただろうけれど、その程度のものだった。


それが、久志をあんなにボロボロにしている連中を敵に回すとなると、相当なイジメを覚悟しなきゃいけなくなる。


「蘭ちゃん、君は1度死んだんだよ?」


テンちゃんの言葉があたしの言葉に突き刺さった。


いきなり地雷を踏んで大爆発に巻き込まれたような感覚だった。


「今はちゃんと心臓も動いているけれど、それもあと数週間で必ず止まる」


そう言われ、あたしは自然と自分の左胸に手を当てていた。


確かに感じる鼓動がある。


あたしに体に血液を送ってくれている。


手だって暖かいし、神経もちゃんと生きている。


だけど、それは今だけだ。


テンちゃんと交わした任務があるからに過ぎない。


「そう……だよね……」