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学校へ到着してからのあたしは、いつものように友人たちに囲まれていた。


だけど今日は適当な相槌はしない。


ちゃんと1つ1つの話を聞いて、ちゃんと返事をする。


言葉が右から左へと流れてしまわないように、一生懸命追いかけていく。


そうやって導き出した返事と笑顔は、すぐにみんなを金色の光に包んでいった。


なんだ、そういうことなんだ。


毎日繰り返される日常に嫌気がさしていたけれど、その中にこそ相手を幸せにすることがあったんだ。


「なんだか今日の蘭って明るいね」


美鈴がパックの紅茶をストローで飲んで、そう言って来た。


「そ、そうかな?」


「あたしもそう思ったよ。いつもの蘭は上の空だもんね」


香織が美鈴の意見に賛成してそう言った。


香織の手にも美鈴と同じ紅茶のパックが握られている。


この2人は登下校も一緒にしているようなので、コンビニにでもよってきたのだろう。


「蘭がしっかりしてきて本当によかったよ」


美鈴がため息交じりにそう呟く。


「ほんとほんと。いつまでもボーっとしてちゃ友達できないもんね」


香織が美鈴の言葉を追いかけるようにそう言った。


あたしはその言葉に一瞬笑顔をかき消された。


まるで、あたしが本当の友達じゃないような言い方だ。