テンちゃんはいつもとても素直な天使だった。


純粋で、真っ直ぐで、そして誰よりもカッコいい天使。


「テンちゃんは、あたしの事を忘れないでね」


そう言うと、テンちゃんは大きく、何度も頷いた。


その目には涙が浮かんでいる。


「あたしも、テンちゃんの事を忘れないからね」


そう言うと、テンちゃんの目から一粒の涙が流れて落ちた。


天使の涙。


それはとても綺麗で、キラキラと輝いていて、スローモーションのように床に吸い寄せられていく。


テンちゃんは下唇をきつく結び、これ以上泣くまいと必死で耐えている。


その顔が幼い子供のようで、あたしはふふっと笑った。


「じゃぁ、また、明日」


テンちゃんは無理やり声を引きずり出すようにしてそう言い、消えて行ったのだった。