久志が1人で我慢してきたことが水の泡になってしまうから、それはできない。


「ところで、屋上からはどうやって出たの?」


「ん? 早苗に連絡した」


「え? でも出たのは放課後なんだろ?」


「そうだよ? だってせっかく久志と2人きりだったんだもん。色々話しておかないとって思ったから」


本当なら閉じ込められた直後に連絡することが可能だった。


だけど、あたしはあえてそうしなかったんだ。


2人きりの空間で軽いおしゃべりをすることで、久志の事をもっとよく理解しようと思ったんだ。


「蘭ちゃんってすごいね。俺が思ってた以上かも」


テンちゃんは呆れたような、尊敬するような、よくわからない眼差しであたしを見た。


「そんなにジロジロ見ないでよ、照れちゃうから」