俺は、息を切らし、若干だが、汗をかいていた。


焦ったのだ…こんな夜中に、一人でいなくなるなんて…


何かあったら、大変だ。


建物の周りを、くまなく探すと、ちょうど砂浜への続いている道の向こうに、美紗はいた。


「美紗!こんな所で何してんだよ。心配したじゃん」


「…あ、ちょっと目が覚めちゃって、夜風に当たりたかったの…ごめん」


どこか、様子がおかしい感じがした…


「ごめんね。戻ろっか」


「あぁ…みんな心配するぞ」


部屋に戻ってから、美紗のことが気になりはしたが…


目を閉じて、ねっころがっていると、俺は、いつの間にか眠りに就いていた。




翌朝…


「おいっ空!起きろ!」


隆志か?…うるせぇ…お前は何も考えずに、一番先に寝てたからいいだろうが…


俺は…思わず、昨日の晩の、優子との出来事を思い出してしまい、嫌でも目が覚めた。


「あぁ、分かった…起きるよ…」


眠たい目を擦りながら、身体を起こした。


「空君おはようっ!やっと起きたのね」


美紗だ…昨日の変な様子とは、打って変わって、元気に挨拶してきた。


「夕方には、帰らないといけないんだよ!早く起きて、また海に行こうよ」


「分かったぁ…」


可愛い美紗様に、そう言われては、起きないわけにはいかない。


俺達は、今日も海へ繰り出した。


相変わらず、海岸は人で賑わっている。


隆志が、何かを思い出したように、言った。


「そういえば…確か、あの裏手の方に、でかい岩場があったなぁ…小さい頃、行った記憶がある」


隆志は、みんなでそこに行こうと、張り切りだした。


海水浴場から、海岸沿いに、ぐるっと回り込んだ所に、それはあった。


「おぉ、すげぇ!!」


そこには誰もいなく、ゴツゴツした岩場が、波に少しずつ削られた様子で、色んな形をなしていた。


見上げると、そこは崖になっていて、上には車が走っている。


「こんな所に転落したら、一環の終わりだな…」


俺は、それを想像し、身震いした。


「サスペンス劇場みたいだ」


クスクス…