“日野”



そこは新選組の故郷といえる場所。




「沖田さん」


「愁くん」


「俺は、貴方と常に一緒に生きてます。心も、志も、この誠も」




この地を出発する今日、新選組は甲陽鎮部隊と名を変える。

薩長に知れている名を隠し、少しでも相手方を刺激しない様にだ。




「そうだぞ総司」


「近藤さん…」


「俺達は、どこにいようと家族だ。
ずっと、これからも。それは変わらないさ」




目を赤く腫らした近藤さんは本人の前でこそ涙を流していないが、それも時間の問題になりそうだ。




「皆さん…ご武運を」




頬がこけ、目元の窪みも酷く。

肩も手首もめっきり細くなった沖田さん。


きっと彼を見るのはこれで最後になるのだろう。




「お前、ンなに目ぇ開いたら、」


「大丈夫です」




アタシの目なんていいんだ。

最後までこの目に焼き付けておきたい。




「ふふふ。愁くんたら、だめですよ」


「総司」



土方に支えられながらアタシの前に立った彼は、弱弱しく、それでいて温かくアタシを抱きしめた。




「大丈夫です、よ」




だって一緒なんでしょう?



今までと変わらない優しくて、少し悪戯な笑顔で沖田さんは言った。




「…敵わないなぁ」




この笑顔に、どれだけ助けられてきたんだろう。




「沖田さん。
…また会いましょうね」




来世でも良い。

地獄でも、天国でも良い。



貴方が本当に大好きで、本当に大切な人でした。