奏でるものは~第1部~



高等部も春休みになった土曜日。

姉と同学年の従兄弟がいる叔父一家が遊びに来た。

遊びに来たといっても、同じ敷地の本家にいる叔父たちが、休日の昼に、私達の顔を見に来たと言うところだが。

叔父夫婦と両親の話も楽しそうで尽きることはなく、両親たちのいる部屋を離れて、庭に向かったテラスから、姉と同学年の従兄弟の頼斗(ライト)とその姉、由梨花(ユリカ)と私達姉妹で喋っていた。


ストローでコーラを飲んでいた頼斗が

「歌織、凌凛館高校に行くんだって?」

と聞いてきた。

「すごいね。お祖父様もビックリしてたわ」

と由梨花も口を挟む。

由梨花も桜輪学園出身で今は大学に行っている。

「芸術科にいくのよ。
やっぱりすごいよね」

唯歌も言ったので、ちょっと戸惑う。

「まあ、がんばるよ」

と、照れ笑いしかできない。

「頼斗は?もう、大学に行くこと決定なんでしょ?」
と聞くと

「青蘭学院でしょ?我が家伝統の」
唯歌も口を挟む。


青蘭学院はうちの一族の男の子の出身校である。
祖父も父も叔父も卒業生である。

「うちの学校、みんな成績はいいけど、ちょっとヤンチャな人もいるよ。
父さんたちだってちょっとヤンチャ組だったんじゃないの?」

にやっとして頼斗はそう言い、コーラを飲む。

「え~!そうなんだ?」

と、知ってた?とばかりに姉を見るとなんだか複雑な表情だったので

ふ~ん、と相槌をうち話を膨らませるのはやめた。




叔父一家が帰ったあと、父に聞くと、ニヤっと笑って何も言わなかった。