敵がドロップした物や市場で買った食べ物、そのほかのアイテムなどをしまっておくことができ、そのほかにもスマホと同じようにお互いにフォローしあった相手となら連絡が取れたりといった機能が使える。

「便利だとは思うけどなんでもありなんだな……」
「一応この世界は私たちからして見たら夢とか現実離れしてて架空世界みたいだけど、ここで生活してる人からしてみたら、私たちがいた世界の方が架空世界だし、ここが現実なんだよね。これもスマホみたいにみんな使ってるし、別におかしいことじゃないんだよ」
「指輪型のしかもらえないの?」
「ううん。スマホに色んな機種があるみたいに色々な種類があるよ。腕輪型とかピアス型とかイヤホン型とか。好きなのを選ばせてもらえる」
「へぇ〜……」
「勇者は毎回不規則的にこの世界にやってくるけど、会ったのはアラトが初めて。私のことは知ってる?」

そう言えば、この少女はずっとアラトの名前を知っていた。今思えば不思議なことだが、話を聞くとアラトにとっても少女にとっても不思議でもなんでもなかった。

「ごめん……全く思い出せない……」
「うん。初めはそんなもの。私も初めは思い出せなかった。私はマフユ。白木 真冬(しろき まふゆ)。アラトと同じ高校の同級生だったんだよ」
「マフユ……」

聞いたことがあるような名前だがまだ思い出せそうになかった。マフユ曰く、脳に一時的なショックが起きていて、この病気にかかると記憶が飛んだりすることはよくあることだという。

「ここは、夢というよりも異世界って言った方がいいかもしれない」

マフユがそういうと、アラトも頷いて、
「腑に落ちないけどそう思った方がいいよな……」と二人でお城に向かって歩きだした。