「ねぇ……その弓矢はどうするの?」
「敵がドロップしたものは私たちがもらうことができるの。売ることもできるし、敵が強ければ強いほど価値は大きわ」
「さっきの細剣といい、RPGの世界みたいだな」
「ここはそんなものよ。無意識的現実逃避症候群って名が付くぐらいだもの。いかにも現実離れしててそれらしいじゃない。」

目覚めた人たちの証言で名がついたとニュースでも言っていたことをアラトは思い出した。
そう言われてみれば、武器も、国も、勇者という呼び名も、化け物のような敵も、現実離れしすぎていて、まさに現実から目を逸らしているようだ。
すると少女は敵がドロップした弓矢をアラトに渡した。

「勇者はね。魔法以外はなんでも使えるの。私はずっとアラトの側にいることはないし、何かあった時の為にこれはアラトが持ってて」
「あ、ありがとう」

ずっしりとした重さがちゃんとあり、持っている感覚もあった。矢の方も先は鋭く光って、殺傷能力は低いものの扱いには十分注意しなくてはいけないと感じた。

「アイテムは本来使わないならしまえるんだけど、しまうために必要な物がまだないから、お城に着くまでは持ってなきゃだめかな」
「お城?」
「そう。サーティアンヌ国を治める王女様に会うと貰えるものがあるの」

少女は人差し指にはめた指輪を見せて、簡易型倉庫兼通信機器と説明した。