「サキザカくん。ねぇ……。起きなよ……。サキザカ アラトくん」
「あと少し……寝かせて……」
「いいけど、その間に死んでも知らないよ？」

優しげな声が急に恐ろしいことを言うので、すぐに起き上がり、状況を把握しようとアラトはあたりを見渡した。
アラトが倒れていた場所は草原とか、花畑とかそういう場所ではなくて、硬い土の上だった。

「えっと……」

すぐ側にはどこかで見たことがある少女が膝を抱えて座っていた。赤い目の色、紺色のセーラー服に似合う白銀の髪色をした少女で、前髪はバラバラだが適度に揃えてあり、後ろの髪は長く、顔は綺麗な方だ。一言で言うなら美少女だろう。

「アラト。ここは今戦場だから、早くサーティアンヌ国に入ることをお勧めするわ。国は特殊な守りで攻撃は当たらないし、武器も防具も身につけていない貴方は戦場にいても無駄に命を落とすだけ。死ぬたくない……帰りたいって思っているなら私が防御に回ってる間に早く国に入りなさい」

少女は淡々と説明すると剣を抜いた。