・・・【ニホン:トーキョー:某病院にて】

お兄ちゃんが眠りについてから、もう二週間が経とうとしている。
救急車を呼ぶまでは本当に寝ているだけに見えて、すぐに起きてくれるんじゃないかって思っていた。
でも、救急隊員がお兄ちゃんをベッドから担架に移動するとき、お兄ちゃんが異常だってことがすぐにわかった。

大人しく移動されて、どんなに声をかけられても起きはしない。肩を叩かれても、お兄ちゃんは目を閉じたままで、規則正しい寝息だけが、私や隊員を安心させた。

病院の心電図だってこの二週間特に変わった様子はない。
変わったのはお兄ちゃんの恰好だけ。

「お兄ちゃん……」

両親が交通事故で死んでから、お兄ちゃんが塞ぎがちになってたのは知っていた。
保険金と、お父さんの遺産は全部お兄ちゃんに入って来て、お兄ちゃんが全部生活のために使ってくれているから私はお金に困ることはなかった。

お兄ちゃんは、私が腹違いの妹でも、大事にしてくれた。
だから、お兄ちゃんは困った時は私が助けてあげたかった。なのに……「夢の中にいたら、私は何も出来ないよぅ……」

私は毎日病院に来ては、帰されるまでお兄ちゃんの側にいるんだ……。