「結婚したら、お義父さんや義兄さんが望んでる通りに本社に戻ってもいい、ともね。元々お二人共、理一君に早く結婚して欲しがっていたし、後継者として本社に戻る事も望んでいた。これまでは理一君が『まだ早い』と取り合わなかったらしいが‥‥。
両方の望みが叶って、しかも相手が柚珠奈なら反対する理由はない。柚珠奈を可愛がっているお義父さんにしてみたら、これ以上の話はないだろう」

「で、でも、私と理一君は付き合ってもないし、恋愛感情なんて‥‥」

「理一君にはあるそうだよ、恋愛感情。柚珠奈だって嫌いじゃないんだろうし、これからゆっくりと好きになってもらえたらって」

「ゆっくりって。そんなぁ‥‥」

驚き過ぎて、思考が正常に働かない。『どうしよう』って言葉だけがグルグル頭の中を駆け巡ってる。

「正直、私達も困惑してる。とりあえずは柚珠奈の気持ちを聞くと言って帰って来たが、そう返事を先延ばしにする訳にもいかないだろう。数日中には返事をしないと」

三人で困ったように顔を見合わせて、ため息を吐いた。

どれだけ急な話でも、確かに先延ばしには出来ない。月曜日には会社で理一君に会うんだし、その時に知らないフリをする訳にもいかない。